注目の金価格

昨年来、急ピッチで水準を切り上げてきたコモディティ価格は、5月初旬に急落して以来、一進一退の展開が続いている。今後、市場はどう動くだろうか。今回はコモディティの中でも貴金属にフォーカスしレポーティングしたい。

金(GOLD)は本格的な下げ要因が見当たらない金

金価格は年内に1600ドルを突破する可能性も

 

金以外の貴金属は産業用の需要が大半を占める一方、金の産業需要は2割程度に過ぎません。宝飾などの実需や投資対象としての需要が圧倒的であり、その意味で金は他の貴金属と需給構造が大きく異なります。市場の規模や流動注、参加者の数、資金量などは、他の貴金属とは比較にならないほど巨大です。

 

ご存知の通り、金価格はここ数年、安定して上昇傾向を維持しています。その背景には、米国の量的緩和によって巷にあふれた投資マネーが金など商品市場に大量に流入する環境が継続していることが挙げられます。世界の資金流通量が増加するのとほば一致するように金の価格も上昇しています(図表1)。このジャブジャブの状態が存在する限り、金をはじめとする商品価格は下がりにくいでしょう。米国の景気回復は予想以上に遅れており、直近の経済指標は軒並み予想を下回る数字でした。 QE3(量的緩和第3弾)の実施についてはいまのところ明言していませんが、FRB(米連邦準備理事会)としても簡単に金融緩和の流れを中立に戻すことはできません。

 

地政学的な要因からも金価格がサポートされる状態といえます。その一つが欧州の財務問題。ユーロから離脱する資金は、やはりドルには行きませんから、相対的に安全性の高い金に向かうのは自然な流れです。中東・北アフU力情勢も地政学的なUスク要因として金価格高騰を後押ししています。

 

さらに金を強気に見ていい理由として、中国の存在があります。中国はもともと金選好が高い国として知られていますが、経済成長による個人所得の上昇で、これまで以上に現物の需要が伸びています。実は中国は世界一の金産出国。にもかかわらず世界第2位の金輸入国なのです。2010年の中国における金の産出量は約340トン。一
方、輸入量は250トンともいわれています。中国一国で昨年、実に600トン近い金の需要があったことになります。

 

そんな中国の高い金需要を裏付けるエピソードがあります。最近ではテレビコマーシャルなどでもよく目にする純金積立。あれはいまから15年ほど前に日本で生まれた商品なのですが、これまで各社がたくさん広告宣伝費などを掛けて普及させてきました。もっとも□座数が多かった時で全社合わせて70万口座あったそうです。一方、2010年の8月に中国工商銀行が試験的にこの純金積立を始めてみました。広告宣伝の類は一切せす、ホームページに告知だけして募集しました。そしてわずか4ヵ月後の1月には100万口座を突破したのです。しかも試験的な募集ということもあり、中国全土の支店ではなく、上海などごくごく限られた都市の支店だけでの取り扱いだったにもかかわらず、です。

 

先ほど申し上げたマクロ経済の状況とはまったく別の意味で、中国の存在が金価格に大きな影響を与えています。この先、各国が金融引き締めに舵を切ると金市場から資金が流出し、価格を下げるタイミングもあるかもしれません。しかし、そんなときこそ中国は「待ってました」とばかりに買いに走るでしょう。ファンドと違い、実需筋は基本的に買いっぱなしですから、下値がどんどん切りあかっていくわけです。

 

そう考えると金の本格的な下げ要因というのは、いまのところ見当たじ)ません。現在1トロイオンス=1500ドル台ですが、年内に1600ドルを突破する可能性もあると思います。その後、どこまで上昇するかはまさに未知の世界です。

急騰・急落を経て下値が固まる

年末に向けて再び50ドルを目指す展開に

 

昨年から今年にかけて非常にエキサイティングな相場だったのが銀でした。金と同じく銀も、米国のQE2(量的緩和第2弾)や欧州の財政懸念などを背景に昨年の夏から急速に上げ足を速め、ファンドや個人投資家の投機的な資金が大量に流入しました。小さな市場に急激に資金が入ってきたため、昨年末が1トロイオンス=25〜26ドルだたにもかかわらず今年4月には50ドルにタッチする場面もあるなど、急騰しました。

 

しかし、5月に入り米国の取引所が先物取引の証拠金に関し、その週3回目となる引き上げを発表したのをきっかけに、わすか4日ほどで49ドル台から32ドル台に急落したのです。現状はだいぶ落ち着告を見せており、32ドルを大底に、34〜35ドル辺りがとりあえずの下値という状況です。

 

銀は8割が産業需要で、かつては写真フィルムの感光剤での需要がメインでしたが、デジタルカメラの台頭で産業需要における銀の役割は終焉を迎えるかに見えました。しかし、フィルムに変わる新たな需要が出現しています。鉛フリーはんだ"Iまその代表例。基盤に電子部品を搭載する際に使われる1まんだIにはこれまで鉛が使われていました。鉛は人体に有害で、自然環境に対する悪影響も懸念されます。それを受け2006年フ月、EUは鉛など有害物質を含んだ電子・電気機器の使用を原則禁止することを取り決めました。鉛に代わる"はんだ"の材料としてもっとも適していたのが銀であり、銀を使用しだはんだ"が"鉛フリーはんだ"というわけです。

 

また太陽光電池でも銀が使われるなど、実需面はしっかりしていることもあり、まだまだ銀に強気の投資家も多いので足元からさらに大きく下げるとは考えにくい。むしろ実需筋にとっては値段が上がればその分、コストとして跳ね返ってくるので、5月の急落はいい調整になっだのではないでしょうか。弱い買い持ちが減って、本当に買いたい人が買い始めている、というイメージです。年末に向けて再び、50ドルを目指すような動きになるでしょう。銀は金に比べて市場も小さく、1ドルぐらいすぐ値段が動きます。その意味では、個人の分散投資の対象にはなりにくいかもしれません。ただし、リスク耐性の強い人にとっては非常に面白いマーケットだと思います。イ諸かるにせよ損するにせよ、リスク分の楽しみは得られるでしょう。

プラチナの価格変動要因は大きく2つ

電気自動車の普及が将来的な不安材料

 

プラチナとパラジウムはどちらも自動車の排ガス触媒としての用途がメイン。値動きも似ているので一緒に考えていいでしょう。この2つは生産国が限られるため主要産出国の生産動向が価格の焦点になりやすい点も共通しています。プラチナは8割が南アフリカ共和国、パラジウムは南アに加えロシアが生産大手です。

 

プラチナが2300ドルという高値を付けたのはリーマン・ショック直前のことでした。南アの経済が好調で電力消費が急激に伸び、供給が追いつかないという事態に陥りました。そもそも南アのプラチナ鉱山は地下5000メートル級の深さということもあり、巨大な重機を地中に入れることが困難です。そのため人夫が中に入り、手作業に近い方法で採掘しています。生命維持のために排水と空調が必要不可欠であり、それを電力でまかなっていました。

 

電力供給が追いつかなくなったことで、彼らのライフラインを維持できなくなる危険性が高まり、2週間ほど採掘をストップしたのです。それにより、プラチナの値段が急騰しました。その後リーマン・ショックを経て、米国の大手自動車会社のGMとクライスラー、フォード、いわゆるビッグ3が経営破たんしました。自動車業界での需要が激減すると見て、一気に800ドルまで急落したのです。

 

このことからも、南アの経済情勢と自動車業界の動向を見ていればプラチナはわかります。イ直動きの要因は非常にシンプルなのです。プラチナはだいたい1700ドルぐらいが採算のラインといわれています。1700ドルを割ったら、必ず戻るからひとまず買いです。いまは1800ドル台ですから、あまり下値不安はないでしょう。

 

プラチナもパラジウムもいまのところ自動車には欠かせない素材なので、値段が上がっでも需要がなくなることはありません。ただし、今後電気自動車の開発が進み、普及すれば自動車にプラチナ・パラジウムは必要なくなります。まだ先の話にはなると思いますが、プラチナ・パラジウムの価格にとっては、それが最大の不安材料といえるでしょう。